北朝鮮のメディア戦略に変化の兆し

執筆者:平井久志2011年7月19日

 最近、北朝鮮のメディア戦略に変化の兆しが見える。朝鮮中央通信の報道記事件数が激増し、同通信や労働新聞のホームページが整備されるなど報道の姿勢に変化がみえる。さらに、朝鮮中央通信の社長がAP通信の招きで訪米し、AP通信の平壌支局を開設することで合意し、また、朝鮮中央通信はロイター通信に対してこれまでの記事、写真に加えて映像まで交換することで合意した。

 北朝鮮は2009年4月9日に最高人民会議第12期第1回会議を開催し、金正日総書記を国防委員長に推戴し、国防委員会の再編を行った。翌10日の労働新聞は金正日国防委員長を除く、3人の副委員長、8人の委員の顔写真を掲載した。特にこれまで写真が公表されたことのない謎の人物とみられていた白世鳳(ペク・セボン)委員、公安機関の国家保衛部第1副部長である禹東則(ウ・ドンチュク)委員の顔写真も公表され「情報公開」の意図に関心が集まった。

 さらに、昨年9月28日の党代表者会議は金正恩の後継者としての登場が最大の関心事だったが、北朝鮮ウォッチャーを驚かせたのは党政治局員、政治局員候補の写真や略歴を公開したことであった。北朝鮮指導部の出身地、生年月日などは韓国政府の推定資料しかないものが多く、労働党の政治局メンバー全員の顔写真、正確な経歴が発表になったのは閉鎖社会、北朝鮮の変化の兆しであった。

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