南沙諸島にこだわる「中国の論理」

執筆者:野嶋剛2011年7月26日

 南の海が荒れている。南沙諸島(スプラトリー諸島)をめぐり、中国とベトナム、フィリピンなど東南アジア諸国との対立が深まっているからだ。

 南沙諸島周辺では最近、ベトナムの漁船が中国艦船から威嚇射撃を受け、海底地質を調べていた国営石油会社ペトロベトナムの資源探査船が調査ケーブルを中国船に切断された。ベトナムは南シナ海で実弾演習を行ない、中国への対抗意識を燃やすインド海軍のベトナム寄港を認める、との情報も流れている。ベトナムと同様に威嚇射撃などを受けたフィリピンは南シナ海を「西フィリピン海」と改名、フィリピンの国会議員も南沙諸島の島への上陸を敢行した。

「行動宣言へ努力」は時間稼ぎ

7月中旬、ベトナムの首都ハノイで行なわれた7週連続となる反中デモ。南シナ海の南沙諸島周辺海域で続いた中国船による妨害行為に対する抗議で、6月初め以降、毎週日曜日に実施されている (C)EPA=時事
7月中旬、ベトナムの首都ハノイで行なわれた7週連続となる反中デモ。南シナ海の南沙諸島周辺海域で続いた中国船による妨害行為に対する抗議で、6月初め以降、毎週日曜日に実施されている (C)EPA=時事

 このほどインドネシア・バリ島で開かれたASEAN(東南アジア諸国連合)・中国高級事務レベル会合で、今後、南沙諸島問題の平和的解決を目指した「南シナ海行動宣言」の実現に向けて各国が努力することで一致し、緊張は緩んだかに見えるが、現実はそれほど簡単ではない。

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