技術で背伸びする中国の焦り

執筆者:高村悟2011年8月2日
事故の背景には中国の焦りがある(c)AFP=時事
事故の背景には中国の焦りがある(c)AFP=時事

 中国・浙江省温州市で起きた高速鉄道事故は信号システムの欠陥、運行管理能力の低さが原因との見方が強まっている。6月末に開業したばかりの北京―上海間の高速鉄道も落雷、大雨でたびたび運行不能に陥っており、中国の高速鉄道の技術的未熟さがここに来て、浮き彫りになっている。その高速鉄道を中国は「独自開発」と称し、中国の技術が世界水準に達したと内外に宣伝している。多発する事故と中国政府のプロパガンダの間にある大きな溝こそ、科学技術や産業の高度化が進まない中国の焦りを映し出している。  中国の高速鉄道はもともと日本の川崎重工業、ドイツのシーメンス、フランスのアルストムなどからの技術導入で車両を開発、信号など運転制御は日、仏などの技術と自国技術を組みあわせて開発した。技術導入後は、モーター出力のアップなどで高速化を果たし、上海―杭州、広州―武漢などの路線では最高時速350キロという世界最速の営業運転を実施している。表面的には、日本の新幹線を上回る最先端技術のようにみえるが、安全を置き去りにし、世界最速というブランドを追求した結果にすぎないことは温州での事故が証明した。日本の新幹線が1964年の開業以来半世紀近く、1件の死亡事故も起こしていないことと対照的だ。高速鉄道に関わった中国鉄道省の技術系幹部は中国紙のインタビューで「安全を軽視した鉄道で、自分は乗りたくない」という暴露発言もしている。

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