クリントン米国務長官は、6月23日、フィリピン外務大臣との共同記者会見に臨み、米国にとって古(いにしえ)よりの同盟国であるフィリピンの国防に関する協同を確約するとともに、「南シナ海で起きている事件は、地域の平和と安定を損なうものである」と指摘した。航海自由の原則および国際法の順守の観点から、同海域に対する米国の関与を継続するという米国の立場を確認したものである。

 クリントン長官は、昨年より南シナ海の領有権紛争への懸念を表明しているが、これに対して中国は、米国が関与すべきでない当事国同士の2国間問題であると位置づけ、当事者でない米国が関与しないよう求めてきた。

 その2日後の6月25日、「米中アジア・太平洋協議」がホノルルで開催された。米国側キャンベル国務次官補と中国側崔天凱外務次官との間で行なわれた協議は、アジア・太平洋地域について特化した問題で両国が話し合う初めてのものとなった。南シナ海問題が主要議題として米側から提起されることを承知した中国は、南シナ海問題での米国の関与を牽制する一方で、南シナ海を含む地域問題について米国と対等な立場で協議することを目標とした。

 今日の米中関係の基礎は、2009年11月に行なわれたオバマ・胡錦濤会談の共同声明に見ることができる。米国は、国際問題で中国が更に大きな役割を果たすことを歓迎した。それは、アジア・太平洋地域における秩序維持についても、中国が重要な役割を果たすことを期待されていると解釈して自然である。ホノルルでの協議において、中国は、米国とアジア・太平洋における地域安定を目的とした役割分担を話し合うことで、米国に対等な立場をとる中国が存在するという2極構造を規定の事実として再確認することに成功した。その枠組みの中で、中国が分担する役割として南シナ海問題を捉えることにより、それが当事者である2国間で話し合うことが適当と解釈する中国の論理性が際立った形となった。米国がアジア地域への介入意思を強くすればするほど、米国はアジア地域問題を対等に協議する立場を中国に与える構造となりつつある。

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