ビジョンなき「東証・大証」統合交渉の不毛

執筆者:磯山友幸2011年8月10日
東電上場前の統合にこだわる大証・米田社長の思惑は……(c)時事
東電上場前の統合にこだわる大証・米田社長の思惑は……(c)時事

 株式市場が氷河期を迎えようとしている。今年3月の東日本大震災直後は、復興期待の外国人買いや機関投資家の損切りの売りで売買が盛り上がり、瞬間的に活況を呈した。その結果、東京証券取引所市場第1部の1日平均売買代金は、3月は2兆円を突破したが、4月以降は大幅に減少。7月は1兆2621億円にまで落ち込んだ。1日平均売買代金は2007年に3兆円を超えていたが、昨年は1兆4473億円と半分以下に転落。このままでは今年はさらに減少することになりそうだ。  既上場株式の売買が細っているだけではない。株式市場の大きな役割の1つである新興企業への資金供給、つまり新規上場も激減している。2004年に153社あった新興市場マザーズを含めた東証への新規上場企業数は、2009年は23社、2010年も26社と大きく減少。今年はやや増加傾向にあるというが、それでも6月までの半年で20社に過ぎない。

外国企業上場で失敗、プロ向け市場にも暗雲

 こうした状況にあって東証は一時、中国企業を主体とするアジア企業に照準を合わせ、東証への上場を誘致する戦略に出た。だが、結局は失敗。外国会社の上場は2008年以降ゼロが続いている。また、上場した中国企業に上場詐欺まがいの不祥事が発覚するというオマケまで付いた。
 そんな東証が鳴り物入りでスタートさせたのが、プロ向け市場の「TOKYO AIM(エイム)」だ。2007年に社長に就任した斉藤惇氏が陣頭に立って開設を急いできたもので、7月15日に第1号が上場、スタートした。取引参加者をプロに限定することで、上場審査の基準を大幅に緩和したのが特長で、新規上場の低迷を打開する切り札として期待された。
 ところが、蓋を開けると、予想外の展開が待っていた。第1号の創薬ベンチャー、メビオファームは、初値がなかなか付かず、結局、売買が成立したのは5営業日目の7月22日。しかも、初日に示された呼び値の1200円を大幅に下回る286円が初値となった。
 新市場には参加する証券会社が冷ややかで、第1号の上場だというのに、ご祝儀相場すら出来なかった。兜町の長年の慣行からすれば異例の事態と言っていい。新しい上場市場としての可能性を注視していた企業側からしても、初値がここまで急落するようでは魅力は乏しい。新市場の前途は多難だ。

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