官僚の復権、大阪の光明

執筆者:白石均2011年8月22日

 輝かしき政権交代から、ほぼ2年が過ぎた。
 あの2009年夏、「脱官僚」や「天下り根絶」を叫んでいた民主党の政治家たちは、今はどうしてしまったのだろう。政権交代直後、一時は、官僚を政策決定プロセスから追い出し、政治主導を気取る「脱官僚ごっこ」が流行した。だが、それも今は昔。菅内閣のもとで、「官僚主導」への軌道修正が進行。さらに、震災復興でまともな働きのできない政治家たち、それに業を煮やし「もう政治主導とかどうでもいいから、ともかく誰か仕事をしてくれ」という方向に傾く世間の風を背景に、ここ数カ月、官僚の復権が急速に進んでいる。
 原発事故対応の不手際で醜態を晒し続けた経済産業省でさえ、例外ではない。

既定路線の経産省人事

記者会見する経済産業省の松永和夫前事務次官(左)と安達健祐新事務次官 (C)時事
記者会見する経済産業省の松永和夫前事務次官(左)と安達健祐新事務次官 (C)時事

 8月初旬、事務次官、資源エネルギー庁長官、原子力安全・保安院長の「3幹部更迭」が突如発表された。「更迭」という言葉に騙され、政治主導の英断のごとく報じたマスコミもあったが、その後明らかになったように、「更迭」された3幹部は巨額の退職金を手中に。しかも、後任人事は、「経済産業政策局長が次期事務次官」といった昔ながらの指定コースどおりに行なわれた。言うまでもなく、政治主導で海江田万里大臣が人事を行なったわけでなく、官僚たちの既定路線どおりの人事だったのだ。  大きな不祥事があった組織では、かつての自公政権でもそうだったように、政治主導でトップの首をすげかえるなど、荒療治がなされることがある。例えば、かつて社会保険庁で次々に問題が噴出した際には、損保ジャパン副社長だった村瀬清司氏が長官に登用されたりしたものだ。  ところが、今回のケースでは、事務次官は言うまでもなく、「経産省から切り離す」方針が確定しているはずの原子力安全・保安院長さえ、経産省幹部の横滑り。しかも、原子力の専門家でも何でもなく、これまで百貨店などを担当していた深野弘行・商務流通審議官を起用した。霞が関ウォッチャーから見れば、この人事は、大臣の英断どころか、官僚たちが、「この程度の不祥事があろうと、役所の人事は、役所のルールどおりにやらせてもらう」と宣言したようなものだったのだ。

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