欧州ではギリシャに端を発したユーロ通貨圏の債務危機が、中核国のイタリア、スペインへと波及する懸念が広がる。一方、アメリカでは債務上限引き上げをめぐる与野党折衝が難航。超大国のデフォルト(債務不履行)というまさかの事態は回避したが、米国債が前代未聞の「格下げ」となった。ドルもユーロも信頼できぬと円が買われ、最高値レベルの円高に――。まさに先進国経済大波乱のひと月だった。
 政治が「麻痺状態」なのは日本だけではない。欧州もアメリカも、「決断できない政治」のため、経済が崖っぷちに追い込まれ、市場は大混乱を続ける。これからの世界はどうなるのか。日米欧3極と呼ばれ、世界の政治・経済をリードしてきた先進諸国が、無惨な姿をさらけ出している。

「日本化」する先進諸国

 英誌「エコノミスト」7月30日号は表紙と巻頭評論において、ユーロ危機と債務上限問題で、それぞれ困難な決断を回避している欧州連合(EU)とアメリカを「日本化している」と野次った。「先進諸国における指導者の無能ぶりには愕然とする」。表紙には花魁風のメルケル独首相と幇間風のオバマ米大統領が浮世絵タッチで描かれ、評論では「このまま行けば、お前達も『菅』になれるよ(Yes, you Kan)」と、オバマの2008年大統領選スローガンと菅直人首相をひっかけ、からかった。
 日本にとってはほとんど「国辱モノ」だが、現実が反論を許すような状態ではないのだから、しょうがない。「先進諸国の政治システムは、危機から抜け出して繁栄に向かうための難しい決断ができない。それが今後も続く本当の危機だ」。その先例が日本。「中国の強権指導者らは、あっという間に仕事を仕上げるという(半ば本当)。札束をたんまり握って、未来は中国のものだと感じるのも無理はない」。 【Turning Japanese, The Economist, July 30th】
 英紙「フィナンシャル・タイムズ」の社説も、ミラン・クンデラの小説のタイトルをもじって言う。「指導者たちの耐えられない軽さ」。国家債務の「大火」に向かって、どの「水鉄砲」で立ち向かうか口争いをやめない欧州各国。債務上限をめぐり、みっともなく必要もない口げんかを続けるアメリカ。先進諸国の経済政策は指導者もなく、まったく方向性を失った状態だ、という。 【The unbearable lightness of leaders, The Financial Times, Aug. 5】

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