北京で庶民的な食堂を訪れたバイデン米副大統領(c)AFP=時事
北京で庶民的な食堂を訪れたバイデン米副大統領(c)AFP=時事

 米国のバイデン副大統領が8月17日から6日間の日程で中国を訪問し、18日に人民大会堂で歓迎式典が行なわれた。

 習近平国家副主席が「あなたが国内問題で忙しいのはよく知っています。よくいらっしゃいました」と迎えると、「中国はすでに米国の国内問題ですよ」と副大統領は笑いながら返した。  バイデン副大統領の訪問の大きな目的は、来年、胡錦濤国家主席から党総書記の座を引き継ぐことが確実視されている習副主席と知り合い、関係を築くことだった。ただ同時に、訪中前に格下げされたばかりの米国債の問題で、「米国債で保有している資産の目減りにつながる」と懸念する中国に、米国債は安全であることを確約することも加わった。  副大統領は「中国は米国の国内問題」というウィットに包んで、相互依存関係の深さを述べたのだ。2人の初会談は友好的雰囲気で45分間行なわれた。会談後、バイデン副大統領はゲイリー・ロック駐中国米大使と共に車で北京中心部から少しはずれた鼓楼大街に向かった。

計算された庶民食堂訪問

 車を降りたのは豚の臓物煮込みで有名な庶民的な食堂「姚記炒肝」の前。副大統領と大使、それに途中から合流した副大統領の義理の娘と孫娘、大使夫人の5人が食堂に入ると、ほぼ満席のお客から一斉に好奇の目が向けられた。「お邪魔して申し訳ない」と副大統領が言うと、「よくいらっしゃいました」「ここは美味しいですよ」と歓声と拍手が上がった。予約されていたのだろう、5人は1つ空いたテーブルに着いた。
 注文したのは北京名物ジャージャー麺5椀、ギョーザ10個、キュウリなどの料理3皿。看板料理の豚の臓物煮込みは注文しなかった。ちなみにジャージャー麺は椀に盛られた麺に、白菜、千切りダイコン、キュウリなどの野菜をトッピングし、これに特製ミソを絡めて食べる。副大統領は周りの客と言葉を交わしながら食事を楽しんだ。
 食べ終わると副大統領は自分の財布から100元札を出した。値段は79元(約950円)。「ご迷惑をおかけしましたので、お釣りは米国の習慣でチップとして取っておいてください」と言った。
 バイデン副大統領は外で待ち構えた記者団に「習氏との会談は上々だったが、ここでの食事の注文は難しかった」と冗談めかして話し、「地元の人で満員の食堂を私の訪問で騒がせたことを申し訳なく思う。ゆっくり昼食を楽しもうとしていたら、私が現れたのだからね」と語った。騒ぎになったことを詫びたのだが、計算された食堂訪問だった。

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