対ロシア債務問題とパイプライン構想の進展

執筆者:平井久志2011年9月16日

 ロシアのイズベスチヤ紙は9月14日付で、ロシア財務省に近い筋の話として、ロシア政府が北朝鮮の対ロ債務計約110億ドル(約8450億円)の9割を帳消しにし、残る1割を北朝鮮での共同事業に充てることで事実上、全債務を帳消しにする方針を固めたと報じた。

 しかし、同紙は「ロシア財務省は、協議は再開されたが(全額帳消しなどの)決定は今のところ、なされていない」としているとも報じ、債務帳消しが最終合意ではないことも指摘している。

 8月31日の記事(「ロシアを巻き込んだ金正日の「生き残り戦略」」)でもお伝えしたように、ロシアと北朝鮮の経済協力はこの債務問題が決着しないと前に進めない。天然ガスのパイプライン敷設や鉄道連結が進展に向けて動き出している中で、ロシアも北朝鮮も債務問題での合意を急いでいるのは事実だ。

 北朝鮮の債務問題は2007年ごろまでは両国の政府間委員会で協議がされてきたが、この間、この協議が中断していた。これが再開されたのはガスパイプライン敷設などが現実の課題となって浮上したからだ。

 しかし、北朝鮮に債務返済能力がないのも事実だ。

 興味深いのは07年時点では80億ドルとされた債務総額が11年には110億ドルに膨れ上がっている点だ。北朝鮮に支払い能力がないのに、利子などを加えて債務総額を膨れ上がらせたロシアの意図はどこにあるのだろうか。

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