先般、都内の米国私立大で、ダートマス大准教授のジェニファ・リンド氏(Jennifer Lind)による「北朝鮮崩壊シナリオへの挑戦」と題したセミナーがあった。彼女は、北朝鮮崩壊シナリオに否定的であり、崩壊が間近の如く言う評論家や学者の説に対して、むしろ軍事的な文脈からは国体が強化され安定していると述べてきた。

 国民の過半数が現状に満足している一方、飢えに苦しむ弱者がどの程度を占めているのだろうか。相互監視網の徹底は、弱者を沈黙させ、日本でいう「百姓一揆」騒動の蓋然性を排除しているとされるが、その体制に綻びが生ずるのだろうか。北朝鮮の崩壊というシナリオは、真の国家情勢が見えないまま描かれて、長い時間を経過している。見えない状態にあって、北朝鮮という国家の存在を肯定的に捉えてみれば、彼女の言う北朝鮮崩壊説の否定にも頷けることがある。

 全体主義が徹底している北朝鮮では、後継者の育成に万全を図り、レジームを維持継承する体制が堅固である。最も警戒するのはクーデターであって、その芽を摘み取ることに細心の注意が払われてきた。半島分断後から3代目指導者の登場に至るまで、北朝鮮に体制転覆の騒動は見えない。

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