だれが台湾200億義援金の主役か

執筆者:野嶋剛2011年10月9日

 東日本大震災が起きた日本に対し、台湾が贈ってくれた200億円という巨額の義援金は、今後の日台関係において10年以上は語り継がれる伝説になるだろう。日台関係において非常に大きなプラスの効果をすでに発揮しており、台湾観光客の増加、日本の政治家の台湾訪問の増加など、日台関係は過去にない熱を帯び始めている。

そんななかで、台湾では与党・国民党と野党・民進党との間で、どちらが200億義援金の「立役者」であったのかをアピールするつばぜり合いも起きている。200億円の大半は民衆の自発的な募金によって集められたもので、基本的に政府や政党が果たした役割は限定的なのだが、台湾も来年1月の選挙を控え、どうしてもこのムードを選挙に生かしたい、という思いもあるのだろう。

先週日本を訪れた民進党の総統候補者、蔡英文党主席は、支持者を集めた講演会でこう語って会場を沸かせた。

「日本の地震が起きた直後、最も早くから募金を呼びかけたのは民進党だった。民進党はあっという間に2億円の募金を集めた。これは我々の政治献金よりもずっと早いスピードで、党主席としては悩ましいところです」

一方、国民党も負けていない。先週、台湾のナショナルデーにあたる国慶節のパーティーが東京で開かれたが、馬総統の側近である馮寄台駐日代表はこんな風に語った(写真)。

「3月11日地震発生直後、馬英九総統は電話で私に、政府からの義援金を日本政府に贈るよう指示し、翌日には救援隊の派遣と物資の輸送の用意ができていることを、ふたたび電話で指示してきました。台湾全国からも自発的に救援活動が始まりました。3月18日の夜、馬英九総統夫妻が、百名以上の台湾の芸能人とともに、自らテレビの赤十字チャリティー番組に4時間も出演し、国民に積極的な募金を呼びかけたのです」

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