伝えられなかった紛争の「半分」

執筆者:2011年10月13日

 私は21世紀初頭のサブ・サハラアフリカで発生した紛争の現場には、ほぼ全て現地入りして取材してきた。政治家、官僚、軍人、反政府勢力の戦闘員、企業関係者、戦闘や虐殺の被害者や遺族、人道支援に当たる国連や国際NGOの職員など紛争に関わるほぼ全ての人々に直接会って話を聞いてきた。

 しかし、どうしても越えることのできない壁が、少なくとも一つあった。この先、ジャーナリストの仕事を続けたとしても、恐らくこの壁はなかなか越えることができないと感じている。それは、紛争時に苛烈な性暴力の被害者となった女性から被害実態について詳細な証言を得ることである。むろん、私のジャーナリストとしての資質や能力の限界という問題もあるのだが、それ以前に、私が「男性」であるという事実が被害者の口を重くした。私と同じころにアフリカに駐在していた他の新聞社の特派員に女性がいたが、彼女は紛争地で被害女性から精力的に証言を集めて報道していた。その仕事ぶりを見て「これは真似できない」と思わざるを得なかった。

 自分の限界について書いたのは、今年のノーベル平和賞受賞者3人がいずれも女性であり、そのうちの2人が西アフリカのリベリアの女性とのニュースに接したからである。エレン・サーリーフ大統領とリーマ・ボウイーさんの2人のリベリア人女性は、女性の「安全」に向けた非暴力の闘いを続けてきたことが評価された。

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