G20――2年半で米国の影響力はいかに衰退したか

執筆者:渡部恒雄2011年11月14日

 11月3、4日にフランスのカンヌで開かれたG20サミットは、ギリシャ債務危機に端を発する欧州経済危機への対処がテーマだった。特にギリシャが財政を立て直すための包括策を受け入れるかどうかが焦点で、世界が懸念を持って見守った。だがこの会議は同時に、米国の世界への影響力衰退の度合いを測る恰好のリトマス試験紙ともなったようだ。

 会議では、結局ギリシャのパパンドレウ首相が、国民投票を見送り包括案を受け入れることになり、債務不履行などの深刻な危機はひとまず回避できた。ただしG20のタスクであった、欧州の金融安全網強化のための欧州安定基金(EFSF)の拡充や、IMFの資金拡充などでは、中国やブラジルらの新興国からの資金拠出などは確約されなかった。

 特にIMFの資金拡充は、米国と中国の利害がからみ、IMF、EU、独仏首脳、オバマ大統領で話し合われたが、具体策は来年2月に先送りされた。中国は、G20首脳宣言に入れられた「(通貨安競争を回避するために)より市場で決定される為替レートに迅速に移行する」という文言に、人民元のフレキシビリティーは切り上げだけではなく、切り下げの双方向があるという認識を示して合意した。また、中国、ドイツ、カナダ、ブラジルなどの経済成長力があり財政も健全な国は、財政緊縮策をとらず資金を市場に供給するという合意がなされた。

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