早くも囁かれ始めた6月解散説

執筆者:2011年12月2日
11月30日、前沖縄防衛局長問題について記者団の質問に答える野田首相 (C)時事
11月30日、前沖縄防衛局長問題について記者団の質問に答える野田首相 (C)時事

 9月に発足したばかりの野田佳彦首相の政権運営に早くも黄信号が灯ってきた。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加、米軍普天間飛行場移設、さらに消費税増税問題や選挙制度改革……など数々の難問に直面した野田首相は、いずれの課題でも解決への糸口をつかむことができず、民主党はがたつき始めた。連立与党の一員である国民新党との間にもすきま風が吹き、与党の結束も崩れつつある。大阪市長・大阪府知事のダブル選挙でも惨敗し、有権者の既成政党離れは加速。まるで濁流に弄ばれる木の葉のように野田政権は揺れに揺れている。そんな中、政界では、野田首相が来年6月に一か八かの衆院解散・総選挙を実施せざるを得なくなる可能性が囁かれ始めた。

反旗を翻した小沢氏

 主要課題のうち、政権の命運にもっとも重大な影響を及ぼすと考えられているのが、野田首相自身が主導して進めている消費税増税問題である。
 野田首相が消費税を段階的に10%まで引き上げるとしているのに対して、野党各党は増税慎重論でほぼ足並みをそろえている。さらに、かつて民主党が「4年間は消費税を上げない」(鳩山由紀夫元首相)としていただけでなく、「今は議論すべきではない」(同)として、消費税増税について議論することさえ封印していたため、野田首相の増税方針に猛反発している。
 野田首相にとって、野党の反発以上に気がかりなのは、政権を支える足下の民主党内の“大物議員”から増税に「待った」がかかったことだろう。
「消費税増税問題をきっかけに政権運営が不安定になり、それが野党に攻撃の種を与えるような形になって、解散総選挙につながっていったら、まだ民主党が政権交代してやろうとしたことの半分もできていない段階なのに、何のための政権交代だったのか」
 民主党の小沢一郎元代表は11月22日、小沢氏を支持する民主党所属衆院議員らで構成する「一新会」の定例会でこう言い放ち、野田首相の方針に反旗を翻した。
 小沢氏は、資金管理団体「陸山会」に絡む政治資金規正法違反事件の公判中である上、今年9月には、この事件で元秘書3人に有罪判決が出されて政治的な力を失いつつあった。さらに、野田首相が「小沢対反小沢」の党内対立の構図を嫌って、小沢系議員を人事で優遇したため、小沢氏は非主流派を統率する合理的理由を失い、発言も湿りがちだった。だが、野田首相の消費税増税方針をきっかけに猛然と牙をむき始めた。このままでは、民主党内は消費税問題をきっかけに再び事実上の分裂状況に陥る可能性がある。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。