防衛省沖縄防衛局長が、記者懇談会における環境影響評価書の提出時期に関する「不適切発言」で更迭された。相手がタテマエで賛成できない結論を、形式上、より上位の権威をもって押し付けたようにすることを、官僚用語で「ゴーカン」と言う。普天間基地の県内移設はまさにその典型だった。「同意はできないが、国防は国の専権事項である以上仕方がない。そのかわり、多額の補助金で地元が潤う」というシナリオだ。「沖縄はゆすり・たかりの名人」というアメリカ政府高官の発言も、それを裏付けている。

 ことの発端は、すでにまとまった環境影響評価書を、なぜ政府が提出しないのかという疑問だった。局長発言は確かに問題だが、では、どう答えるべきなのか。年内に提出する方針を言いながら、なぜ今ではないのか、そこに合理的な説明はない。

 環境影響評価書は、海面埋め立てに先立って事業者が県に提出する書面で、県側に受け取りを拒否する理由はない。「着工」に地元の理解を得ることは当然としても、評価書は、むしろ早期に提出して議論の時間をとることが、理解を得る正道ではないのか。

 政府が年末まで提出を渋っている本当の理由は、「地元への配慮」ではない。現政権にとって評価書の提出は、苛立つアメリカを説得する唯一のカードだ。年末の予算編成では、辺野古移設の事業費や県を懐柔する振興費の計上が必要だ。そこを切り抜ければ、年明けにはアメリカ大統領選挙で普天間への関心は薄まる。だから、時間稼ぎが必要だ。早々と評価書を提出して沖縄県に一蹴されれば元も子もない……私は、それが野田政権の本音だと思う。

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