2011年中南米では4カ国で大統領選挙が行なわれた。

 アルゼンチンのクリスティナ・キルチネル大統領、ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領が連続再選を果たし左派政権の座を守った他、ペルーでは中道左派のウマラ政権が誕生した。中道左派政権のグアテマラでは決選投票で一転して右派のオトー・ペレス元将軍が大統領の座を射止めた。ウマラ政権の穏健さが際立っていることを考慮すると、2010年にかけて顕著となった中南米諸国の中道化への傾向は(2010年11月16日「中道化する中南米の政治地図」参照)、継続しているとみてよいであろう。

「アラブの春」に揺れる中東と比較して、中南米の民主政治の定着度は揺るぎないものがある。だが、1980年代に開始した民主化以降、民主主義の質の問題が問われ続けてきた中で、11月6日に重なったグアテマラ(決選投票)とニカラグアでの大統領選挙は、今後の中南米の民主化にとって注視すべき問題を投げかけているといえる。

 グアテマラでの元将軍の当選は、メキシコの麻薬戦争の影響が中米全体に浸透する中で、治安問題の解決がいかに市民生活において焦眉の急であるかを物語るものだ。中南米諸国にとって市民の安全の確保が解決すべき最優先課題であることは、ラティノバロメトロ(サンチアゴに本部を置く国際NGO)が先ごろ公表した2011年の世論調査結果でも明らかである。

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