インドの経済・産業をウォッチしていると、政府予算から工業生産見通しまで、実にさまざまな数字が公式文書やメディア情報となって飛び交っていることがわかる。だが、こうした政府の方針や当事者の見解をそのまま検証・咀嚼せずに伝えると、受け手に大きな誤解や混乱を招くことが多い。「2016年度までにインフラ投資1兆ドル」や、「2020年までに鉄鋼生産能力が2億トンに」などがそれに該当するのだが、前者については民間企業のカネを当てにするPPP(官民協力)プロジェクトを念頭に置いているため、現地の日系企業駐在員らは「そのカネを誰が出すかでみんな頭を悩ませている」と口をそろえる。そもそも電力料金などでまだまだ受益者負担の原則が確立していないインドのインフラ事業が計画通りに進むかどうかはかなりの疑問だ。また後者は単に製鉄メーカーが各州政府と結んだ事業計画のMOU(覚書)の数字を足し算しただけで、韓国・ポスコの大規模一貫製鉄所建設計画が地元農・漁民の反対運動や環境規制などに直面し、MOU調印から5年たっても着工すらできていないことを考えれば、その実現性がよくわかるだろう。

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