勢いを増す「衆院解散」への流れ

執筆者:2012年1月6日

 消費税増税、米軍普天間飛行場移設、環太平洋経済連携協定(TPP)など、多くの政策課題を中途半端な形で残したまま、野田政権は2012年の年明けを迎えた。加えて、野田佳彦首相にとって前途多難な1年となることを予言するように、年末年始に民主党からの離党者が相次ぎ、2つの新党が結成された。
 政局の火種は他にもあり、これらをきっかけとして年内に野田首相退陣か、あるいは衆院解散・総選挙か、さらには民主党分裂や自民党分裂などの政変に至るのかどうか。いずれにしても、野田政権を揺るがす政局上の大混乱が今年中に生じることは、すでに確定していると言っていいだろう。

「分裂してもやる」

1月4日、年頭記者会見を行なった野田首相 (C)時事
1月4日、年頭記者会見を行なった野田首相 (C)時事

 とりわけ政局の不安定要因になっているのは、就任直後から一貫してぶれていない野田首相の政策的主張、つまり消費税増税である。日本にとって消費税増税がいま本当に必要かどうかという政策的な価値判断は脇におくとして、政局的にはこれほど危ない政策はない。増税はやはり国民的には人気がなく、選挙戦を戦う上でも足かせになるからだ。逆に言えば、野田首相はこうしたことを百も承知で自ら危地に足を踏み入れたわけで、絶対に増税に道筋をつけるという決意は固い。  その意向を踏まえて、民主党と政府はそれぞれ年の瀬も押し詰まった昨年12月29日と30日に、消費税率を2014年4月に8%へ、15年10月には10%へと、2段階で引き上げることを決めた。  野田首相は1月4日の年頭記者会見では、記者から「消費税増税法案の成立は難しいと思うが……」と尋ねられたのに対して、穏やかではあるものの断固とした口調で言い返した。 「(あなたの質問は)『難しい』と一刀両断でありましたけど……」  そう言って、さらに続けた。 「私は大義のあることをあきらめないで、しっかりと伝えていくならば、局面は変わるというふうに確信をしています」  この言い方は、いつも冷静な野田首相らしくない。消費税増税について淡々と決意を語ればいい場面であるにもかかわらず、あえて記者の「難しい」という言葉を繰り返して挑戦的な言い方をしてしまったのは、増税に執着するあまり、肩に力が入ってしまったのだろう。  12月中旬、首相官邸で面会した民主党ベテラン議員は、会談終了後に周囲にこう漏らしている。 「首相は固い。反対議員の動きなんか、あまり気にしていないほどだ。『仮に民主党が消費税をめぐって分裂しても、それでもやる』と言っていた」  また、同じ時期に野田首相と会った首相経験者は、消費税増税法案が国会で否決された場合には衆院を解散して信を問うという決意を聞かされた。  民主党が分裂する可能性があろうが、衆院選で敗北して潰れてしまう危険性があろうが、野田首相は一歩も退かない構えなのだ。その決意には鬼気迫るものがある。

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