台湾総統選挙と東南アジアの「台商」

執筆者:樋泉克夫2012年1月6日

 2期目を目指す国民党の馬英九に対し、政権奪還を狙う民進党の蔡英文――両岸関係の今後を左右するであろう台湾の総統選挙まで10日を切った。内外の注目は専ら台湾に注がれている。だが、選挙運動は台湾だけで展開されているわけではない。台湾の外に飛び出した「台商」とよばれるビジネスマンもまた、「貴重な一票」の持ち主なのだ。そこで各陣営は重要幹部を海外に派遣し、選挙運動を展開することになる。

 1月4日、バンコク国際空港に降り立った国民党副主席の江丙坤を、北タイ在住の雲南系華人が中心となって組織した「泰国馬呉後援総会」の面々が迎えた。台湾と北タイの雲南系華人を結ぶのは遠く国共内戦で敗れ北タイに逃げ込んだ国民党残存勢力。民進党政権当時、彼らは台湾からの支援のバルブを閉められ、中国への接近姿勢を示したとも伝えられた。台湾(国民党)、北タイ(国民党残存勢力)、それに中国(?)――点と線を結べば、泰国馬呉後援総会の背景が浮かんでくるようだ。

 僅か24時間のバンコク滞在だが、江副主席は「台湾の経済発展と今後の地域統合」と題する講演を行ない、馬政権が進めてきた中国との経済協力システムの「両岸経済協力枠組協議(ECFA)」について在タイ台商の理解を求める一方、馬当選後の台湾とASEANとの経済協力の将来図を示した。

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