新年初頭、日本の各メディアは2012年が「世界的な指導者交代の年」に当たると特集を組み、地域・世界情勢への影響を展望しているが、その中から中南米はまったく抜け落ちた感があった。中南米には地域紛争もなく、わが国とのバイタルな外交課題も存在しない中で分からなくもないが、近年多極化する国際社会で存在感を増す中南米地域を日本のメディアは過小評価していないか。
 国連中南米カリブ経済委員会(ECLAC)が昨年末に発表した「経済速報」によれば、2011年の中南米経済はユーロ危機の影響で減速傾向が現れているものの、平均4.3%成長と堅調である。人口6億人を擁する中南米は成長を遂げる中所得地域であり、主要国で1人当たりの所得が1万ドルに近づきつつある。低い政府債務比率、健全な財政基盤、外貨準備の高さを背景に投資を惹きつけ、中国やインドと比べるとややダイナミズムに欠けるものの、ともに世界経済を底支えする新興地域である点に変わりはない。
 昨年ブラジルは経済規模で英国を抜いて6番目の経済大国に浮上した。このブラジルを含め中南米では10年前から左派政権が誕生して経済成長を率いるとともに、リーマンショック後の世界で課題となった社会格差是正の試みを先駆けて実施して成果を挙げている。
 先述の「経済速報」は、世界経済に不透明さが続く中で、今年12年の中南米の成長率を3.7%と予測している。南米は資源輸出で中国市場への依存度を強めており、中国経済の減速が資源価格や輸出にどう影響を与えるか、またアメリカ経済との一体化を強めるメキシコ・中米は、アメリカ経済が財政問題からいかに立ち直れるかに経済動向が左右される。決して楽観視はできないが、度重なった過去の金融危機の経験から、主要国が新たな危機に対処するに十分な経済体質を備えていることは確かである。

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