ロシアの縁故資本主義

執筆者:名越健郎2012年1月28日

  昨年12月にモスクワなどで反プーチン・デモが吹き荒れた背景には、下院選不正批判のほかに、プーチン首相の側近や取りまきのビジネスマンがプーチンの威を借りて不正ビジネスをしている疑惑への反発もあった。

 ロシアのネットサイトでは、プーチンの友人グループによる錬金術を調査した「プーチン腐敗白書」なる報告書が公開されている。ネムツォフ元副首相、ルイシコフ元下院議員ら4人が代表を務め、独立系専門家が調査した。

 それによれば、プーチンはサンクトペテルブルク副市長の地位を追われ、失業中だった1996年、親しい仲間7人と共同出資し、協同組合「オーゼロ(湖)」を設立。ペテルブルク郊外の湖畔別荘地を購入した。この時の共同出資者7人がプーチン体制下で夢のような成功物語を収めた。

 共同出資者のうち、ウラジーミル・ヤクーニンはロシア鉄道社長。アンドレイ・フルセンコは副首相を経て教育科学相。その弟で共同出資者のセルゲイ・フルセンコはガスプロムの最大子会社、レントランスガス社長で、ロシアサッカー連盟会長を兼務する。

 ユーリー・コバルチュクはロシア銀行の最大株主で、全国テレビネットを傘下に収めるナショナル・メディア・グループの総裁。ニコライ・シャマロフはロシア銀行の第3の株主で、ブイボルグ造船の共同経営者。この2人はKGBでプーチンの同僚で、しがないスパイだったが、いまやロシアの11年版億万長者リストの115位と184位に名を連ねている。

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