意見聴取会では継続審議を求める意見も出たが(c)時事
意見聴取会では継続審議を求める意見も出たが(c)時事

 経済産業省の原子力安全・保安院が再稼働にゴーサインを出そうとしている関西電力・大飯原発3、4号機について、安全性の根拠とされる「ストレステスト」の中身に、数値の改竄と偽造という重大な疑惑がみつかった。津波への安全性が最大の焦点であるストレステストで、全ての推定や計算の基準になる数字、設計段階で想定していた最大の津波高さを1.86メートルから2.85メートルへと、関電は1メートルも水増し・改竄していたのだ。虚偽を承知で、結果を妥当と言い募る保安院も、「合作」の共同責任を強く疑われる。もともとお手盛り満載のストレステストに、でっち上げが加わり、再稼働に向けた茶番劇の非科学的インチキぶりは極まった。  関電は大飯原発だけでなく、高浜原発1号機のストレステストでも、同様の改竄をしている。設計上の想定津波高さ1.3メートルを2.6メートルへと、2倍も水増ししている。ミスではなく、明らかな意図をもった改竄であることは間違いない。

数値改竄による「安全詐欺」

 想定津波高さは、建設当初の設計思想に基づくもので、後からちょこちょこ変更するようなたぐいの数字ではない。それを大きく変えるということは、基本設計を根底から見直すことだ。関電はいつ、想定津波高さを大幅に変更し、設計思想の大転換を図ったのだろうか。
 福井新聞の昨年11月29日の記事では、福井県内の原発の想定津波高さは、高浜原発は1.3メートル、美浜原発は1.6メートル、大飯原発は1.9メートル、となっている。数字はまるめてあるが、筆者が持っている資料と同じである。
 少なくとも11月末までは、この数値が公式な想定津波高さだった。ところが、その前、同月17日に経産省に提出された大飯4号機のストレステスト評価報告では、1メートルかさ上げした2.85メートルという数値が使われている。明らかな偽造数値だ。
 関電には改竄の理由と、2.85メートルという数値の根拠を、逃げずに示してもらいたい。合わせて、これを妥当な評価結果だとした論拠を、原子力安全・保安院には求めたい。
 事実の外形を見れば、関電は安全性データの虚偽申告で、原子炉等規制法違反の疑いが濃厚で、虚偽を承知で再稼働に動いた保安院には、公衆の安全を損なう行為、原子炉等規制法違反と放射線障害防止法違反が問われる。国家公務員法違反の疑いもある。
 改竄の目的とからくりはとてもわかりやすい。というより子供も騙せないほど単純で見え見えの「安全詐欺」である。

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