エジプト大統領選挙が本格化

執筆者:池内恵2012年2月18日

 6月末までに大統領を選出し、国軍最高評議会(SCAF)が担っている行政・執行権限を民選の大統領に移譲するのが、エジプトの民主化プロセスの重要な画期だが、その候補者をめぐって駆け引き・探り合いが続く。ムバーラク政権崩壊後1年の2月10日・11日にかけて先鋭化した軍政批判・民政移管要求に徐々に応じる形で、大統領選挙への立候補受付が3月10日に前倒しされ、投票も早められて5月中に行うという流れになってきている。

 知名度や選挙戦の出だしの先行という意味では、二人の有力候補者がいる。元外相(1991-2001年)で前アラブ連盟事務局長(2001-2011年)のアムル・ムーサ(Amr Moussa 1936年生まれ)と、元ムスリム同胞団の有力活動家で職能団体の医師組合会長も経験したアブドルモネイム・アブルフトゥーフ(Abdel Moneim Aboul Fotouh 1951年生まれ)である。

 アムル・ムーサは「旧体制の温存」を願う勢力の頼みの綱である。2000年のパレスチナの第二次インティファーダ(民衆蜂起)などで民族主義・反イスラエル・反米感情が高まった時期に、外相として対イスラエル強硬発言を行ったことで、特に下層の大衆から人気を集め、そのことからムバーラク前大統領に煙たがられて、アラブ連盟事務局長に棚上げされたと言われる。まるっきり「旧体制ずぶずぶ」でありながら、政権崩壊に先立つ時期にある程度大統領から距離があった経緯から政治的に生き延び、ムバーラク政権崩壊後は「デモの若者支持」「民主化推進」の人気取り発言を繰り返している。議会で最大勢力となったムスリム同胞団(自由公正党)へも盛んに秋波を送っている。

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