ムスリム同胞団の支持候補決定迫る

執筆者:池内恵2012年2月19日

 ムスリム同胞団とその傘下の自由公正党の指導部が、2月18-19日の会合で、大統領選挙で支持する候補者を議論しているようだ。これまでは、(1)ムスリム同胞団・自由公正党からは独自候補を立てない。(2)候補者が出そろったら支持候補を決める。という「勝ち馬に乗る」あるいは「背後からのキングメーカー」を目指していたようだが、昨日この欄で伝えた、「アラビー・アラブ連盟事務局長の軍・ムスリム同胞団共同擁立」という観測報道に対して、早期の立場表明を迫られた形だ。

english.ahram.org.eg/NewsContent/1/64/34817/Egypt/Politics-/Breaking-Brotherhood-to-pick-their-presidential-ca.aspx

 ムスリム同胞団の方針に反して立候補表明したアブルフトゥーフは支持しないことが既定路線だが、当初から名が挙がっていたムーサ元外相・前アラブ連盟事務局長か、新たに浮上したアラビー前外相・アラブ連盟事務局長か、あるいは第三の「独自の」候補を推薦するのか、注目されるところである。

 大抵のアラブ諸国では軍に次いで外務省が組織統制が良く権限も大きい。いつまでも前面に出て統治の責任を負わされたくない軍が、国際的な認知度の高い外交官をお飾りの文民大統領に据えて、旧体制・既得権益の保持と国際的な印象改善を両立させようとするのは、アルジェリアのブーテフリカ大統領(元外相)の例がある。これに対してチュニジアではイスラーム主義組織のナハダ党が、旧体制では同様に弾圧され多くが国外に逃亡を余儀なくされていたリベラル派と連合して連立政権を組み、旧体制からの切断をもたらしている。

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