アングロ・アメリカンの凋落

執筆者:平野克己2012年2月29日

 2月7日、スイスのトレーダー最大手「グレンコア」と、やはりスイスの資源メジャー「エクストラータ」との合併が発表された。新しい社名は「グレンコア・エクストラータ・インターナショナル」になる。合併後の総売上高はおよそ16兆円で、資源会社としてはおそらく世界第4位に躍り出る。川上から川下まで網羅できる資源総合企業の登場だ。ちなみに業界第1位はBHPビリトン、第2位はブラジルのヴァーレ、第3位はリオ・ティントである。かつて世界最大の鉱山会社としてアパルトヘイト時代の南アフリカ経済に君臨したアングロ・アメリカンは、もしかすると中国の国営石炭会社「神華能源」にも抜かれて、業界第6位に転落する。

 鉱業分野では過去最大といわれるこの合併劇をしかけたのは、グレンコアのCEOイワン・グラセンバーグとエクストラータのCEOミック・デービスだ。ふたりとも南アフリカ白人である。グラセンバーグは1957年生まれ、デービスは1958年生まれの同年配である。
 グラセンバーグはヨハネスブルグにある名門ウィットウォータースランド大学を出て地元で会計士をしていたが、1984年にグレンコアの南アフリカ石炭部門に入り、以後順調に出世して2002年にCEOになった。一方のデービスは、南アフリカのローズ大学を卒業し、ウィットウォータースランド大学で講師を務めた後電力公社のエスコムに入社、1995年に南アフリカの鉱山会社ジェンコーに移った。ジェンコーのCEOであったブライアン・ギルバートソンにヘッドハンティングされたのだが、このギルバートソンCEOが世界最大の資源メジャーBHPビリトンの、いわば創造主だ。ジェンコーがイギリスのビリトンを買収したのちデービスはビリトンのCFOに任命され、ビリトンがオーストラリアのBHPと合併してBHPビリトンが誕生した2001年に、エクストラータのCEOに招かれている。

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