米財務省インテリジェンスが追う金融情報

執筆者:春名幹男2012年3月15日

 米財務省が指定暴力団山口組と篠田建市(通称・司忍)組長(70)およびナンバー2の弘道会会長高山清司被告(64)を経済制裁の対象に指定、米国内にある彼らの資産を凍結した、という2月23日のニュース。
 日本側では「なぜ今、ヤクザが」というのが一般的な反応だった。

「情報機関」として機能

 この措置を発表した米財務省の「テロ・金融情報局」(Office of Terrorism and Financial Intelligence=TFI)という組織の重要性を認識しなければ、米政府の狙いがなかなか理解できないかもしれない。
 実はこの局、国際金融、国内金融両局と並んで、それぞれに担当次官を置く、同省の3大部門の一つ。その傘下には、「テロ金融・金融犯罪部」と「情報分析部」の2部がある。
 そして最も重要なことは、この情報分析部(Office of Intelligence and Analysis=OIA)が全部で17機関ある米政府インテリジェンス・コミュニティの重要な一角を成し、れっきとした情報機関として機能しているという事実だ。OIAは04年の情報権限法に基づき設置された。
 そもそも同局は①違法な行為から金融システムを保護②ならず者国家、テロ組織、大量破壊兵器拡散組織、資金洗浄組織、麻薬組織などと戦う――ことが公式の主要任務。また、OIAの任務は①テロ組織、大量破壊兵器拡散組織などへの金融支援ネットワークに関する情報分析②経済・政治・安保に関するタイムリーな情報支援――とされている。
 OIA担当次官補、レスリー・アイアランド氏は2010年6月就任した。彼女はCIA長官補佐官など情報機関勤務25年のベテラン。直近は国家情報長官の下でイラン対策部長、さらにオバマ大統領に対する情報報告官を務めていた。

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