震災1年後の日本に向けられる世界の視線

執筆者:会田弘継2012年3月23日

 あの慟哭の日から1年が過ぎた。死者1万5854人。行方不明者は依然、3143人(警察庁調べ。3月21日現在)。人々はまだ茫然と海を見遣っている。午後2時46分。東日本大震災発生1年後の同時刻にサイレンが鳴った。父を津波で失った男性が海に向かって祈る。その姿を、米紙「USAトゥデイ」は宮城県石巻市から伝えた。「1億2700万の全国民が、この男性と悲しみをともにした」。【Millions share sorrow a year after tsunami, USA Today, Mar. 12】震災1年後の日本を世界のメディアはさまざまな角度から伝えている。

「絆」はどこへ?

「大震災から1年、日本はもたついたままだ」。米紙「ワシントン・ポスト」の元東京特派員ポール・ブルーステインは失望を隠さない。「日本は目覚めて沈滞から抜け出すはずだったのに、また日本病に戻ってしまった」。震災直後には日本人特有の気骨を示した。「絆(きずな)」を合い言葉に、電力不足も皆で寒さを我慢し乗り越えることができた。なのに、今は被災地のがれき処理を全国の自治体に頼んでも、ほとんどが拒否。「絆はどこへいったのだ」。一致協力して復興に取り組むかと思った政界は、またまた「恨み晴らしとポスト争い」、首相交代劇を繰り返してきた相変わらずの政治だ。世界がうらやむインフラ、医療保険制度、ライフスタイルを持つ日本。いま一度未来を切り開け、とブルーステインは訴える。 【A wakeup call Japan ignored, The Washington Post, Mar.11】
 東北人の粘り強さへの称賛は依然続いている。シンガポール紙「ストレーツ・タイムズ」はイスラム知識人招聘のプログラムで震災後の日本を訪れた若手学者のエッセーを掲載した。タイトルは「日本人から粘り強さを学ぶ」。冒頭に宮沢賢治の詩「雨ニモマケズ」を引用する。東北人の粘り強さを支えているのは前近代から続く伝統維持の精神だとみる。シンガポールは経済発展の中で、人々を結び付ける伝統を失っていないか。「ルック・イースト(東方を見よ)」。もっと日本を見直して学ぶべきではないか、と若手学者は訴える。 【Learning resilience from the Japanese, The Straits Times, Mar. 11】

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