香港は「党員治港」に怒りを爆発させるか

執筆者:樋泉克夫2012年3月28日

 3月25日、香港行政長官選挙が終わった。結果は胡錦濤系と見られる梁振英が勝利し、江沢民・習近平系とされる唐が惨敗した。最初から北京の中央政府が“指定”した候補が選挙委員大多数の支持を得てスンナリと勝利した過去4回(76年、92年、95年、07年)の選挙とは異なり、今回は終盤に近づくに従って縺れにもつれ、これに北京における政権交代期の権力争いが重なり、史上空前の醜い選挙となったものの、最後に勝利したのは3月15日に北京で温家宝首相が「香港は必ずや多くの香港住民に支持された特首(長官)を選出するだろう」と示唆した通り、梁振英だった。

 梁は685票(推薦人:305人)、唐は285票(同:390人)、何は76票(同:188人)、無効は82票(内、白票は75票)といった得票結果をみると、唐と何の両陣営から共に100人前後の推薦者が離れ、3候補のいずれの推薦者にも名前を連ねなかった選挙委員などを合わせた380人が梁に投票した計算になる。

 早速、中国国営新華社は「公開、公平、公正の原則が貫かれ、民意を正しく反映した選挙結果だ」と梁の勝利を伝えた。一方、香港のメディアは選挙戦最終段階の19日、胡錦濤が劉延東国務委員(副首相級)を香港と深圳河を一つ隔てただけの深圳特区に送り込み、企業家を中心とした唐支持派と目される選挙委員に対し「香港の民意を尊重して投票を」と猛烈な梁支持工作を展開した結果だと伝えた。日本の大方のメディアも、劉国務委員の工作を梁の勝因とみているようだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。