テロ事件の顛末と仏大統領選への影響

執筆者:渡邊啓貴2012年4月3日

 南仏を震撼させ、7人の犠牲者を出した銃撃テロの犯人モハマド・メラの大捕物は、30時間に及ぶ治安当局の犯人自宅包囲・突入作戦の結果、犯人が被弾しバルコニーから転落即死して終結した。

 この事件の第1幕は、3月11日に発生した。南仏トゥールーズ市の第1パラシュート連隊所属の30歳になるマグレブ系の伍長が運動ジムの駐車場でスクーターに乗った男に銃撃殺害された。そしてその4日後には、トゥールーズ市から近郊のモントバン市で第17パラシュート連隊の3人の兵士が襲われ、2人が殺害された。いずれも海外出身の兵士であったことから、フランス軍への怨恨や反感を持った者による外国人兵士を狙った犯行ではないかと疑念がもたれた。

 そしてさらにその4日後の3月19日、再びトゥールーズ市で3度目の犯行が行なわれた。今度はユダヤ教司祭と4歳、5歳、7歳になるその3人の娘たちが殺害された。事件の不気味さにフランス世論は沸騰した。すでにアルカイダが犯行声明を出していたこと、今度は軍関係者ではないが、ヨーロッパの歴史の恥部であり、今日においてもなおヨーロッパ諸国で完全には払拭できていないユダヤ人迫害問題がまた螂頭を擡げたのではないか、という懸念が人々の脳裏をよぎったからである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。