薄煕来がすべてを失った日

執筆者:野嶋剛2012年4月11日

 昨晩、出張のため北京に到着して、ホテルに入った夜の10時ごろ、中央電視台をつけると、重慶市の前トップ・薄煕来の職務停止と、その妻の谷開来の殺人容疑での身柄拘束のニュースが流れていて、びっくりした。政治スターだった薄煕来がすべてを失うことが100%確定した日として記憶されるだろう。

谷開来が、昨年11月に重慶で変死した英国人ビジネスマンのニール・ヘイウッドの死亡に深く関わっているとの憶測は流れていたが、こんなに当局の動きが速いとは思わなかった。温家宝首相の全人代での「紅衛兵」批判の激しさには異様な雰囲気が漂っていたし、大量の武器が見つかったという観測も流れていて、激しい政治闘争が進行していることを想像させたが、この事件の素早い展開は、恐らくは、次の指導部選びが本格化する夏をにらんだ政治的意図が働いていると読むこともできる。

今朝、道路脇の新聞スタンドに出かけていくと、人気がある「新京報」はほとんど売り切れていて、ほかの新聞も次々と出勤する人々が手にとっていた。

このニュースは、中国の人にとってはむしろ我々よりも情報が得にくく、薄煕来が大変なことになっている程度しか知らない人も多かったので、驚きをもって受け止められているのだろう。

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