アルゼンチンの石油国有化の背景と波紋

執筆者:遅野井茂雄2012年4月19日

 アルゼンチンのフェルナンデス大統領は4月16日大統領府に州知事と企業家を集め、スペインの石油大手レプソル傘下の石油会社YPFの株式の51%を取得し、国家の管理下に置くと発表した。その内の51%を中央政府が、残り49%を、炭化水素を産出する10州の管理に移すとする法案を議会に提出、与党が多数を占める議会で承認される見通しだ。大統領は、17年ぶりに同国が天然ガスや石油の輸入国に転じるに至ったと述べ、株主に配当しながら投資と生産拡大を怠りエネルギー不足を招いたと同社を非難し、「エネルギー主権の回復」と国有化の正当性を主張した。

 昨年12月以来の両者の対立が妥協点を見いだせず、1999年の石油公社YPFの民営化でレプソルが買収して以来の反転という結果となった。国内の石油価格や輸出が抑えられていることが生産拡大のインセンティブに繋がらない要素もあり、投資協定で守られているレプソル側に分はある。現在レプソルはYPFの株式全体の57%を占め、残りの内25%を現地のピーターセングループが所有しているが、レプソルの所有する株式のみが国有化の対象となる差別的な措置である。株式取得の資金調達等について大統領は明言を避けた(大統領は「接収」expropiacionという言葉を使っており、具体的な支払いについては不透明である)。

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