2012年4月16日、東京都の石原慎太郎知事が米国のヘリテージ財団における講演で行なった「尖閣諸島を買うことにいたしました。東京が尖閣を守ります」という発言は、各方面に波紋を広げた。野田政権の主要閣僚の数人は、石原発言に対して条件反射のように、尖閣諸島の国有化の可能性について発言している。ここでは、石原発言の政治性や実現性を議論しない。それよりも、むしろ、領土の所有権をめぐる問題で思考実験を行ない、問題の今後の展開を考えてみたい。

 石原発言後、様々な議論が出てきたが、その中の1つに、「中国が2022年問題に懸念を持っている」というものがある。「2022年問題」は、「領土を実効支配して50年が経過した場合、領土の帰属が確定する」という理論に則っている。その理論では、沖縄が日本に返還された1972年から起算して、50年が経過する2022年までに、尖閣諸島を中国が実効支配しなければ、領有権の主張ができなくなるとするのである。歴史的事実として、米軍が尖閣諸島の一部を射爆場として使用していたものの、中国が1972年以前に尖閣諸島を実効支配した実績は無いため、この議論の前提自体に問題はあるが、中国側の思考を知る上で興味深い。

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