北朝鮮による人工衛星打ち上げと称するミサイル実験に対する周辺国の眼は冷めている。その理由は、1つに、実験自体が失敗に終わり、深刻な問題を引き起こさなかったこと。そしてもう1つに、北朝鮮によるミサイル脅威は、その周辺国にとって既知の脅威となっており、ミサイル打ち上げが、特に地域の戦略環境に緊張や変化をもたらすものではなかったためである。今回の実験は、2月末の米朝合意を砕く結果になったものの、その後の両国の反応を見ている限り、事態は双方の予想の範囲内で収まっているように見える。

 ミサイル実験の失敗が、北東アジアの安全保障環境にとって好影響を与えたとすれば、ミサイル市場におけるノドン・ミサイルの評価の下落が決定的になったことではないだろうか。これは、北朝鮮からのミサイル不正輸出を警戒する各国にとって、実務上の負荷が軽減されることを意味する。もちろん、北朝鮮がディスカウント価格で非合法市場にミサイルを供給し、劣悪な製品が出回る可能性が高まったと見ることは可能だが、現実としてこの可能性は封じられることになると考える。

 国際社会は、北朝鮮に対して、現在すでに厳格である制裁を今後更に厳しくすることが予想される。国連安保理は、4月16日に、ミサイル発射の強行を強く非難し、安保理決議(1718と1874)への「重大な違反」と認定する議長声明を採択している。米国には、安保理決議に基づく制裁内容を強化する動きがあり、日本を含めた西側諸国等も、これに追随すると思われる。北朝鮮がこれに反発して、更なるミサイル実験や核実験を強行した場合、現在よりも強化された経済制裁が課されることになる。中国も、これらの動きを無視して北朝鮮寄りのスタンスを維持することはできないであろう。

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