中露合同演習の疑心暗鬼

執筆者:名越健郎2012年4月28日

 4月末に黄海で6日間実施された中露の合同軍事演習「海上協力2012」は、米軍のアジア太平洋重視戦略に対抗する狙いがあった。しかし、中露間の相互不信も増幅しつつあり、一枚岩とはいかないようだ。

 演習には、中国艦船18隻、ロシア艦船7隻が参加。航空機迎撃演習や対潜水艦攻撃訓練も行なわれた。米国の空母機動艦隊や潜水艦を拡充する海上自衛隊を想定した訓練とみられる。演習地域は、米韓両軍が北朝鮮をにらんで共同訓練をする海域に近く、米韓両軍の連携に対抗する目的もある。

 だが、中国初の空母ワリャーグは参加せず、噂された両国艦隊の対馬海峡通過はなかった。海上補給や救難訓練、海賊からの人質救出など防衛的な側面もあった。

 中国海軍幹部はタス通信に対し、「演習は22日に始まったのに、ロシアの艦船は21日にやっと青島に到着した。短期間では、乗員は与えられた課題をこなすのは難しい」と不満を述べていた。演習は、合同司令部も設置されず、相互の独自演習の色彩が強かった。

 演習実現までには曲折もあった。中露の合同軍事演習は2005年に始まり、隔年実施を原則に07年、09年と続いたが、昨年は行なわれなかった。演習場所などをめぐり合意できなかったためだ。今回の演習規模も、計70隻が参加し、陸空両軍も加わった05年の演習より縮小している。

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