NHK「平清盛」はなぜ面白くないのか

執筆者:関裕二2012年6月1日
平清盛を演じる松山ケンイチも浮かぬ顔 (C)時事
平清盛を演じる松山ケンイチも浮かぬ顔 (C)時事

 NHK大河ドラマ「平清盛」の視聴率が低迷しているのだという。  その理由は「画面が汚い」などというものではあるまい。最大の原因は、複雑な人間関係と時代背景を丁寧に説明していないからではないか。背景には、いくつも歴史の大転換が埋もれているのに、話を「男女の愛憎劇」に矮小化し、ホームドラマに仕立ててしまったことが、敗因であろう。実にもったいない話だ。  たとえば、平氏や源氏は天皇家の末裔なのに、なぜ平安貴族が蔑む、武家の道を歩んだのか。なぜ「穢れ」と忌み嫌われる殺生を引き受けねばならなかったのか。その理由が、描かれていない。  さらに、「院政」をめぐる問題がある。ドラマを観ていれば、白河上皇(伊東四朗)が独裁者であることは理解できるかもしれない。だが、このような「院の独裁」や「親政」が、白河上皇の時代から始まった事実と理由が明示されていない。  直前まで、藤原摂関家が朝堂を牛耳り、天皇の外戚として権力を掌握してきたのである。  原則として、古代の天皇に「絶大な権力」は与えられていなかった。「ミウチ(外戚)」や取り巻きたちが、司祭王の側面が強い「権威に満ちた天皇」を補佐して政治を運営する体制が守られていた。真の実力者が、天皇の権威と結びつくことによって、安定した政権を維持することができたのである。

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