大統領選挙を睨んで動くオバマ外交

執筆者:渡部恒雄2012年6月1日

 共和党のロムニー候補が、指名獲得に必要な代議員数を確保し、党候補に確定した。これで大統領選挙がますます本格化していくだろう。

 大統領選挙において、現職のアドバンテージは、外交における米国のリーダーシップを実際に国民の前に見せられることだ。5月にともに米国で行なわれたキャンプデービッドでのG8と、シカゴでのNATOサミットの2つがそうである。実際、この2つの会議では、オバマ大統領の再選の鍵を握る3つの重要な課題が話し合われた。①ギリシャがユーロ離脱をするかどうか②イランの核開発を止めることができるか③米軍が主体であるNATOのISAF(国際安定化部隊)は2014年末までにアフガニスタンでの戦闘を終了し撤退できるかどうか、である。

 これらは、すべて米国民が不安を持つ課題であり、米国経済にも直接影響するものだ。欧州の経済危機や、イランに対するイスラエルや米国の軍事行動を睨んだ原油価格の上昇は、今の世界経済の回復の最大のリスク要因であり、イランの核開発とアフガニスタンの泥沼化は、米国の安全保障へのリスクを高め、財政緊縮を進める米国にさらなる軍事費の支出を迫るものだからだ。

 オバマ大統領はキャンプデービッドとシカゴでのそれぞれのサミットにおいて、ドラマティックなリーダーシップを発揮したわけではない。しかし、細心のバランスを取りながら、ホスト国としての存在感を示し、米国に必要な外交上の布石も着実に打った。

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