米国発のエネルギー革命が世界を覆い始めた。主役は頁岩(シェール)層に含まれる天然ガス、シェールガスだ。これまで人類が使って来た天然ガスと成分、 性状はまったく変わらないが、採掘法はまったく異なる。従来の天然ガスは一般の原油と同じように、含有する層に井戸を掘れば地層内の圧力で自然にガスが噴 出するのに対し、シェールガスはそのままでは生産されない。硬い頁岩層が天然ガスを封じ込めているためで、ガスを得るには頁岩に細かい無数の亀裂を入れ、 ガスが移動できるようにする必要がある。「非在来型」といわれる由縁だ。

エネルギーベンチャーが技術開発

シェールガスを試掘する作業員(米ペンシルベニア州)(c)AFP=時事
シェールガスを試掘する作業員(米ペンシルベニア州)(c)AFP=時事

 シェールガスそのものの存在は古くから知られていたが、最近までほとんど利用されなかった。頁岩層に人工的に亀裂を入れるのが難しく、仮にできたとしてもきわめて高コストだったためだ。シェールガスは「存在するが使えないガス」にすぎなかった。そうした状況を変えたのは、2003年あたりからの原油、天然ガスなど資源価格の高騰と、米国における在来型の天然ガスの資源枯渇、生産減退だった。そこで米国内に膨大な資源があるとみられていたシェールガスを開発しようという無謀なプロジェクトに挑戦するエネルギーベンチャーが登場。頁岩層に自在に亀裂を入れ、効率的にシェールガスを生産する技術開発に取り組んだ。  在来型の天然ガスで十分な埋蔵量を確保し、高値に安住していた米エクソンモービルや英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、英BPなどのメジャーはシェールガスに関心を示さなかったが、ガス資源を持たざるベンチャーは大きなリスクをとって困難な採掘技術の開発に挑んだ。チェサピーク・エナジー、アナダルコ・ペトロリアム、XTOエナジーなどだ。  彼らはやがて、地上から垂直に掘り始めた井戸を途中から水平方向に変える水平掘りの既存技術に磨きをかけ、水平坑に高圧の水と酸などの薬品を注入、頁岩に細かなひびを入れ、さらにひびに砂を入れ割れ目を維持する技術を生み出した。これでシェールガスを安定的に生産できる手法が確立された。シェール層の状態を的確に把握するイメージング技術、ひびを入れる「フラクチャリング」という技術がまさに天然ガスの世界を一変させる革命となった。

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