6月5日の中露首脳会談は、戦略パートナー関係の深化に関する共同声明を発表したり、2020年までに貿易額を昨年の830億ドルから2000億ドルに引き上げる目標で一致するなど、中露蜜月の復活を思わせた。

 中露関係は、米露リセット外交を進めたメドベージェフ前政権時代、やや後退した感があったが、中露蜜月外交を推進したプーチン氏の大統領復帰で、再び格上げされたかにみえる。

 関係強化の背景には、オバマ米政権がアジア太平洋重視路線を打ち出したことがある。パネッタ米国防長官は米海軍艦船の6割を太平洋に配備する方針を発表したが、太平洋進出を図る中国とアジア重視を掲げるプーチン政権はともに、米国のプレゼンス拡大を懸念しており、米国けん制で中露が一致したと言える。

 極東シベリアの過疎化を「安全保障上の脅威」と懸念するプーチン大統領は新設の極東開発相を同行させ、極東シベリア開発のパートナーとして中国を選択した印象を与えた。極東シベリアの住民は中国人流入を嫌うが、過疎化対策には、一定の中国人流入もやむなしとみなしたかにみえる。

 1つ不思議だったのは、テレビで見る限り、首脳会談でプーチン、胡錦濤両首脳に笑顔がなく、むしろ緊張感があふれていたことだ。ケミストリーの合ったプーチン氏とブッシュ前米大統領のやり取りでは、対立しても笑顔がみられた。中露首脳会談はいつも、うわべのレトリックに終始し、両首脳の肉声は伝わってこない。

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