北朝鮮は4月の第4回党代表者会、最高人民会議第12期第5回会議で金正恩(キム・ジョンウン)氏への権力継承作業に一区切りを付け、金日成(キム・イルソン)主席の誕生100周年の祝賀行事で重要政治日程を終えた。4月13日の人工衛星(長距離弾道ミサイル)打ち上げ失敗は後継体制に冷水を浴びせたが、追加的な衛星発射や第3回核実験などは自制し、朝鮮半島情勢は李明博(イ・ミョンバク)政権や韓国メディアを口を極めて罵る「口撃」を除いては、一応の小康状態を保っている。
 危険を内包したこの小康状態の水面下には、どういう状況が横たわっているのだろうか。

「核実験の予定はなかった」

 北朝鮮外務省スポークスマンは5月22日に朝鮮中央通信の記者の質問に答える形式で、主要8カ国首脳会議の宣言を批判する興味深い論評を発表した。北朝鮮が得意とする強硬とソフトを織り交ぜた「二股攻勢」である。
 強硬論の側面としては、(1)経済強国建設の必須的な要求に従い自主的な衛星発射の権利を堂々と今後も絶えることなく行使する(2)自衛的な核抑止力は、米国の敵対視政策のために生まれたものであり、敵対視政策が続く限り核抑止力を片時も止めることなく拡大強化する――というもので、人工衛星(長距離弾道ミサイル)の打ち上げや核開発を今後も続けることを改めて宣言した。
 ソフトな側面としては、(1)初めから平和的な科学技術衛星打ち上げを計画していたため、核実験のような軍事的措置を予定していなかった(2)朝鮮半島の平和と安定のために、米国側が提起した憂慮事項も考慮して、北朝鮮が2.29米朝合意には拘束されることはなくなったが、実際に行動は自制していると米国側に数週間前に通知した――というもので、もともと核実験の予定などなく、2.29米朝合意に拘束されないが実際の行動は自制しているとした。
 日本のメディアの評価は分かれたが、この論評は、核実験をする計画が当面はないことを内外に表明し、米朝対話再開に向けた北朝鮮の米国へのラブレターという色彩が強かった。強硬論の部分は、新たな制裁などこれ以上の圧力を掛けるなという、米国への警告だ。米国のデービース北朝鮮担当特別代表は、5月21日にソウルで6カ国協議の日米韓首席代表の協議を行ない、対北朝鮮政策で日米韓3国が連携していくことを確認した。この論評は同特別代表が翌22日に中国を訪問し、中国当局と対北朝鮮政策を協議しているタイミングで出たという点に留意する必要がある。
 北朝鮮は論評を出すことで、「北朝鮮を刺激するな」という中国の米国への働き掛けに裏付けを与え、米国に対しては「さらなる挑発行為」を自制する用意があることを伝えた。北朝鮮情勢はこの談話以降、3回目の核実験情報などが姿を消し、小康状態に入っていった。
 北朝鮮外務省スポークスマンは6月9日に李明博政権を非難する論評の中で「現在、計画もしていない核実験や延坪島砲撃戦のような強硬対応措置を起こさせ、あたかもわれわれが『好戦的』であるかのごとく浮かび上がらせ、われわれと周辺国との関係を緊張させ、反共和国(北朝鮮)制裁圧迫の雰囲気を作り出そうというものだ」と述べ、核実験などの強硬措置を取る意思のないことを確認した。

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