エジプト民主化の混乱要因は「司法の独立」

執筆者:池内恵2012年6月14日

  エジプトの大統領選挙の決選投票が16・17日に行われる。昨年のムバーラク政権打倒の際に表出された体制変革の夢をイスラーム主義組織ムスリム同胞団の公認候補に託すことに多くの国民が納得できるのか、あるいは専制的統治への不安を押し殺して軍人出身のテクノクラートに「安定」の望みを託すか、国民の選択に注目が集まる。

  ところが投票直前に「邪魔」が入る可能性が出てきた。最高憲法裁判所が14日に、二つの重要な法についての違憲審査の結論を出すというのだ。一つは議会選挙に関する法をめぐるもので、昨年3月に発布された「憲法宣言」では、議会の議席の3分の2を諸政党の比例区に、残り3分の1は小選挙区に配分し、非政党の独立候補がこれを争うと定めていた。その後7月から9月にかけて複数回発出され改訂された議会選挙法では、小選挙区にも政党推薦候補が立候補できるものとされた。この議会選挙法が、軍が発出し、暫定憲法として通用している「憲法宣言」に反するという訴えに、憲法裁判所が判定を下す。ここで「違憲」と判定されると、昨年11月から今年1月にかけての議会選挙投票によって選出された現在の議会が解散され、新たな選挙法をまた軍が発出し、それに基づいて新たに選挙をやり直すということになりかねない。

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