専門家大臣の功罪

執筆者:2012年6月15日

 「素人」の田中直紀氏にかわって、拓殖大学教授の森本敏氏が防衛大臣に起用された。誰もが認める安全保障の専門家であり、民間出身の防衛大臣として注目されている。

 日本国憲法によれば、閣僚の過半数は国会議員をあてることになっている。また、閣僚は「文民」でなければならないが、この規定に抵触するのは、「現役の自衛官」や「軍国主義者」であると解釈されており、森本氏の起用は、いずれの面から見ても、法的には問題ない。一方、自民党の石破茂元防衛大臣は、「政治家でない以上、軍事的な出来事に政治的責任はとれない」と批判し、防衛大臣は、選挙を通じて国民に責任を持つ政治家であるべきだとしている。

 国民の代表である政治家は、出身等を背景にしたスペシャリストである以前に、国政全般に通じる広い視野と、国民としての常識的感覚を持ったゼネラリストであることが求められる。閣僚にも、そうした広い視野と、常識にしたがった的確な判断ができる資質が求められる。知識は、後から補うことができる。それ故、閣僚は、政治家であり、ゼネラリストであることが望ましい。

 ゼネラリストの資質は、政治家だけのものではない。民間にこそ、そのような資質を持った人材は多い。民間人であることの利点は、「政治的利害」あるいは党派的打算を超えて、「自分の信念」にしたがって判断し、行動できることだ。その観点から、民間人の特性を「緊急避難」的に活用することはあり得る。

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