歴史の陰影にじむサッカー欧州選手権

執筆者:佐藤伸行2012年6月18日

 近いものを遠くに見せ、遠くのものを近くに映し出すのが記憶であり、また人の心であるとすれば、サッカー欧州選手権(ユーロ2012)のグループステージA組、ロシア・ポーランド戦(6月12日)を契機に起きた両国サポーターの大規模衝突は、過去の憎悪の歴史をまざまざと間近に見せる事件だった。

 フーリガン同士の喧嘩の常として、どちらが悪いのかを吟味しても意味はないが、ロシアのサポーターがロシア国旗を掲げてワルシャワ市内を行進したことが、ポーランド側には許せない挑発と感じられたようだ。ポーランド警備当局は放水銃や催涙弾も使って鎮圧し、双方合わせて約180人を拘束する騒ぎになった。

 事後、ロシアのプーチン大統領報道官は「海外からやってくる観客を守るのは開催国の責任だ」とポーランド政府を批判し、これもまたポーランド人の心証を害した。こうした混乱が祟ったのか、強豪ロシアはまさかのグループステージ敗退、開催国として必死の強化に取り組んできたポーランドも、1勝もできずに姿を消した(なお、A組からはチェコが首位、あのギリシャが2位で決勝トーナメントに進出する)。

ナチスの暴虐を傍観したロシア

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