NASAが使用を要請したタイのウタパオ航空基地

執筆者:樋泉克夫2012年6月30日

 バンコク東南郊にある国際的リゾート地、パタヤ。その近くに、時に民間航空も利用するタイ国軍のウタパオ航空基地がある。このウタパオ航空基地は近接するタイ海軍サタヒップ基地と一体化して運用され、バンコク防衛の要衝として位置づけられているが、同時にタイをめぐって変化する内外情勢を反映してもいる。

 はるかヴェトナム戦争の時代、ウタパオ航空基地はラオスとの国境に隣接する東北タイのウボン、ウドンの両航空基地と並んで米軍にとって重要な作戦基地であり、前線航空基地であった。当時、ウタパオ航空基地からは、機体を真っ黒に塗られた不気味で巨大なB-52爆撃機やKC-135空中輸送機が休むことなく南北ヴェトナムに向けて出撃していった。そして米軍機はヴェトナムの最前線から多くの米兵を運んできた。彼らの目的地はパタヤ。体に染み付いた硝煙と血腥い臭いを洗い流そうと遊び狂った。

 かつて小さな漁村でしかなかったパタヤは押し寄せる米兵と若きタイ女性によって狂騰の街と化し、戦争景気で沸き返った。ヴェトナムから米軍が撤退した後、米軍兵士にとっての束の間の“休息の地”であったパタヤはお色直しを施され変身し、国際的リゾートとして脚光を浴びることになる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。