6月29日(金)、エジプトではカイロのタハリール広場を中心に、各地で「権力移譲の百万人行進」と銘打ったデモが行われた。タハリール広場の横断幕には「軍政打倒」と書かれ、国軍最高評議会が6月17日に発出した「憲法宣言追加条項」の撤回を求め、6月14日に最高憲法裁判所が行った、人民議会の解散を命じる判決を拒否する、といったシュプレヒコールが上がる。

 しかし実態は、大統領選挙に当選し、翌30日に宣誓式を控えるムルスィーの「非公式の宣誓式」となった。誰もが待ち構えていたのは、夕方に予定されていたムルスィーの演説だったのである。

 デモ隊は軍政への批判の声を挙げて圧力をかけてみせるが、直接軍に抗議するというよりは、ムルスィーの軍との関係を後押ししようとする目的が明確である。多分に政治的な演技と言えよう。その意味で、統制は取れているが、ムスリム同胞団の支持者以外はそれほど参加していないかもしれない。

 ムルスィーは24日に当選が決まった直後にテレビで演説をしたものの、直接民衆と向き合うのは29日が初めてだった。すでに大統領執務室に入っているムルスィーは、かつてムバーラクを護衛していた国家警護隊に守られてタハリール広場の特設ステージに現れた。予告されていた午後6時より少し早く、演説は始まった。ムバーラクが常に予定よりはるかに遅れて現れたことを多くが思い出し、「時代が変わった」とツイートした。筆者もこういったツイートやフェイスブックのポストに誘われて、インターネット上のアル=ジャジーラの生中継で、日本時間では夜1時台のムルスィー演説に見入ってしまった。http://www.aljazeera.net/livestreaming/pages

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