ギリシャ緊縮財政派政府の誕生と深まる苦悩

執筆者:渡邊啓貴2012年7月6日

  6月17日にギリシャで行なわれた総選挙の結果、緊縮財政支持派である新民主主義党(ND)のサマラス党首を首班とする連立政権がスタートした。

 しかし、ギリシャの政党関係がうまく調整されたとは言いがたい。NDと連立したのは総選挙で第3党となった中道左派の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)と第6党の民主左派。いずれも閣僚を送ることは断念し、閣外協力にとどまった。

 注目の財務相に、当初起用されるとされたのは最大手・ナショナル銀行のラパノス頭取。同氏はPASOK政権下(2000-04)で、政府経済諮問組織の代表、EUギリシャ代表部勤務の経験があり、EUとのパイプも強い人物とみなされていた。しかしこのラパノス氏は、政権成立直後の週末に網膜剥離の手術で入院した首相についで、胃の不調を訴えて首相とともに6月末の欧州理事会(首脳会議)を欠席。結局、財務相就任を辞退した。理由は表向きは健康問題だが、新政権の人事に不満があったとの見方もある。前途多難を予想させる新政権のゴタゴタぶりであった。

「時間稼ぎの政権」という悲観論

 せっかく成立したギリシャの連立政権であるが、実は欧州エコノミストの間では、期待値は高くない。「時間稼ぎ」だけがこの政権の仕事であるという悲観的見方をするものも多い。

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