フロリダ州タンパで8月27日から開催される共和党全国党大会まで約1カ月半となった。共和党大統領候補の指名獲得を事実上確実にしているミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事は、共和党全国党大会開催前までに1つの重大な判断を下さなければならない。それはロムニーがホワイトハウス奪回に向けて大統領選挙キャンペーンをともに戦う共和党副大統領候補の指名である。

 リック・サントラム元上院議員(ペンシルベニア州)が共和党大統領候補指名獲得争いから撤退し、ロムニーが共和党大統領候補指名獲得を事実上確実にした今年4月上旬、ロムニーは自らの選対本部のベス・マイヤーズ上級顧問を副大統領候補検討委員会の委員長に任命した。マイヤーズ女史はロムニーがマサチューセッツ州知事時代(2003年1月-2007年1月)に首席補佐官を務め、前回の2008年共和党大統領候補指名獲得争いにロムニーが出馬した際にも選対本部長を務めており、ロムニーに長年仕えてきた側近中の側近である。現在、ロムニーをはじめ少数の極めて限られた関係者により共和党副大統領候補の検討が慎重かつ徹底的に行なわれており、部外者には知る由もない。

 4年前の2008年大統領選挙キャンペーンでは、共和党大統領候補であったジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州)がミネソタ州セントポールでの共和党全国党大会開催直前に、アラスカ州のサラ・ペイリン州知事を副大統領候補に指名し、その発表は大変大きな驚きを持って受け止められた。マケインにとってはアラスカ州共和党エスタブリッシュメントに反旗を翻してきたペイリンの副大統領候補指名は1つの大きな「賭け」であった。だが、マケインの「賭け」は、ペイリンが大統領選挙キャンペーン中に副大統領候補としての資質を疑われかねない発言を相次いで行なったこと、そして、大統領選で敗北したことを考慮すると、結果的に裏目となったことは明らかである。今回、女性の副大統領候補としては、コンドリーザ・ライス前国務長官、ケリー・アヨッテ上院議員(ニューハンプシャー州)、全米初のインド系女性州知事のニッキ・ヘイリー・サウスカロライナ州知事、医療保険制度改革関連法(オバマケア)に強く反対しているキャシー・マクモリス・ロジャーズ下院議員(ワシントン州第5区)らの名前が浮上している。だが、ロムニーは副大統領候補指名について4年前のマケインの「轍」を踏んではならず、マケインのように大きな「賭け」に出る可能性は少ないのではないかと考えられる。

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