鴻海はシャープから手を引くのか

執筆者:野嶋剛2012年8月5日

 以前もこの欄で取り上げた台湾の「鴻海精密工業」によるシャープへの資本参加問題が、大きな岐路を迎えている。

2500億円の赤字を計上したシャープの株価が底なしの下落を見せ、先週末には192円になった。この株価は、3月下旬に鴻海が資本参加を表明したときに示した取得基準株価の「550円」という当時の株価から6割ほど下落したことになる。鴻海は670億円を投入し、9.9%のシャープ株を取得し、筆頭株主になることが当時の合意事項だった。

しかし、その後、鴻海は、台湾の金融当局の許可が出ていないため、シャープ株の購入資金をまだ日本に送金していなかった。もし3月のままの「550円」という価格で取得するとなれば鴻海には「高い買い物」になり、多額の損失を計上しなければならなくなる。

台湾市場ではこのあたりの事情を懸念して、鴻海軍団と呼ばれる「鴻海」「鴻準」「奇美電」などのグループ企業の株価が先週から軒並み大幅に下落し、先週の金曜日1日だけで1200億円相当の市場価値が蒸発してしまったとされる。

鴻海の創業者、郭台銘総裁は先週、慌てて自ら日本に飛び、シャープと緊急会議を開催。その合意事項として、鴻海側は3日、「資本参加の方針に変わりはないが、3月に合意した購入株価についてはしばられず、今後再調整を行うことでシャープの同意を得た」という文書を市場に提出し、火消しを計った。

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