寒い国から来るスパイ

執筆者:名越健郎2012年8月17日

 7月3日のメドベージェフ・ロシア首相の北方領土・国後島視察で、日露関係は再度冷え込むかにみえたが、7月28日のソチでの玄葉外相とプーチン大統領の会談後、多少好転している。今秋、同大統領に近いパトルシェフ安全保障会議書記が訪日する予定であることもその現われだろう。

 在京ロシア筋によれば、パトルシェフ氏は日本側と東アジアの安全保障問題や密漁対策、情報交流などを討議する。訪日すれば、野田首相と会談する可能性もある。訪問準備のため、安保会議のルキヤノフ副書記が9月に訪日するという。

 サンクトペテルブルク出身のパトルシェフ氏は、サンクト派のシロビキ(武闘派)に属する。プーチン大統領とは旧ソ連国家保安委員会(KGB)の同期で、若い頃KGBレニングラード支部で一緒に働き、親交を深めた模様だ。

 プーチン氏が大統領府監察局長になった1998年にペテルブルクから招かれ、監察局次長に就任。プーチン氏が99年にKGBの後継機関、連邦保安局(FSB)長官になると副長官。プーチン氏が2000年に首相になると、後任のFSB長官に起用された。8年間スパイ組織のトップを務めており、アンドロポフ元KGB長官に次ぐ長さだ。08年のプーチン大統領の首相転出に伴い、実力派閣僚らで構成する安保会議の書記に就任した。

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