軍の最高指導機関で、現在、計12人で構成する党中央軍事委員会も、政治局常務委員並みにごっそり顔ぶれが代わりそうだ。最高指導部に適用する「硬規定」を援用すれば、郭伯雄・徐才厚の両副主席以下、梁光烈・国防相(71)、陳炳徳・総参謀長(70)、李継耐・総政治部主任(69)、廖錫龍・総後勤部部長(72)の6人は当然、退く。ただし、軍幹部に関しては今のところ、党・政府幹部向けのような「硬規定」はおろか「軟規定」すら存在しない事実は、銘記して欲しい。
 前述の党中央や国務院に加え、軍中央や軍直属研究機関の中堅幹部らの情報をまとめると、胡は党中央軍事委副主席には政治局常務委員向け(就任時に68歳未満)、平の委員には政治局員向け(同65歳未満)の年齢基準を「軟規定」として適用する方向で根回ししているという。副主席に昇格しない限り、第二砲兵の靖志遠・司令官(67)、海軍の呉勝利・司令官(66)が続投する可能性も小さくなる。北戴河で最終調整したとみられる軍首脳人事は――。

 

情報化・ハイテク化で発言力を増す総装備部

 習近平体制を支える制服組トップ、軍令担当の党中央軍事委副主席には常万全・総装備部部長(63)の昇格がほぼ固まった。これまでは総参謀長経験が不可欠なポストだったが、「総装備部は兵器・装備の情報化・ハイテク化、宇宙開発も一手に担い、巨大な予算を牛耳る。経済を主軸に世の中が回る平和時に、総参謀部に匹敵するような発言権を持つのは自然な流れ」「胡は最も古めかしい軍の人事システムにも新風を吹き込みたいのでしょう」と幹部ら。
 No.2である軍政担当の副主席にも、解放軍史上初めて陸軍以外からの抜擢が見込まれている。「指揮能力のみならず、最新の軍事技術に精通し人格・識見ともに図抜けている」との評判が定着している許其亮・空軍司令官(62)が最有力という。党中央軍事委では唯一の50年代生まれ、二期10年を全うできる若さは大きな強み。ただし、弱みがないわけでもない。2010年8月、北朝鮮を脱出したミグ21戦闘機が遼寧省撫順近郊へ墜落した事件では、「少なくとも6分は中国領空を侵犯された。実は瀋空(瀋陽軍区空軍)は初動に遅れた。ゆるゆるの防空体制は、厳しく批判された」と当時、瀋陽軍区某部に在籍し現在は総参謀部の若手幹部。許は1999年から4年余り瀋陽軍区副司令兼瀋空司令を務めた実績を足場に副総参謀長に転じ、司令官に昇った経緯があるだけに、「政治的な責任を蒸し返す声が出るかもしれない」という。その場合は、初の空母就役や国産空母の完成も間近で、鼻息の荒い海軍トップ、呉勝利が対抗馬となる。

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