9月からブラジルでも販売される新興国向け小型車「エティオス」(c)時事
9月からブラジルでも販売される新興国向け小型車「エティオス」(c)時事

 トヨタ自動車の業績が急回復している。今年4-6月期の業績は最終損益が2903億円と東日本大震災に直撃された昨年同期の250倍に急回復した。販売台数では今年上半期(1-6月期)に前年同期比33.7%増の497万台(グループのダイハツ工業、日野自動車を含む)に急伸し、米ゼネラル・モーターズ(GM)の467万台、独フォルクスワーゲン(VW)の445万台に大きな差をつけ、首位を奪還した。通年では976万台と過去最高を目指している。ただ、好調の背景には大震災の反動需要増、リーマンショックで落ち込んだ米国需要の復調という外部環境の追い風がある。トヨタが今後も世界トップの自動車メーカーの座にとどまれるのかは即断できない。むしろ足下には大きな不安もある。  まず、確認すべきはトヨタが2011年に世界トップの座から滑り落ちた理由だ。はっきりしているのは東日本大震災の影響による部品の供給途絶によって生産が停滞し、「売りたくても売る車がなかった」(トヨタ関係者)ことだ。さらに昨年秋にはタイの大洪水があり、バンコク近郊のピックアップトラックや小型車を中心とする生産拠点の稼働率が低下、インドネシア、フィリピンなど周辺の東南アジア諸国向けの部品供給の一部も滞ったため、生産がダウンした。トヨタだけでなく、日本メーカー全体が天災に直撃され、販売台数を落とした。だが、そうした要因に目を奪われると、トヨタが直面するグローバルメーカーとしての不安を見落とすことになる。

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